2025年6月3日(火)から開催される「伝統文化未来共創Project THE FUTURE in TRADITION 伝統の中にある未来」まで、あと100日となりました。今回は、100日前を記念して、本プロジェクトの賛同者代表である、弓馬術礼法小笠原流 三十一世宗家嫡男 小笠原清基(おがさわら きよもと)さんにインタビューさせていただきました。伝統文化への想いや本プロジェクトをはじめたきっかけ、そして気になるイベント内容まで…多くのお話を伺うことができましたので、ぜひご覧ください!
ーまずは、弓馬術礼法小笠原流についてお伺いしたいです
弓馬術礼法小笠原流は、今からおよそ830年ほど前、鎌倉時代に源頼朝公にお仕えしたのがはじまりで、武士の礼法や弓術、弓馬術などをお伝えしてきました。室町時代には足利家に、江戸時代には徳川家というように歴代の将軍家にお仕えしてきた家であり、さらに日本の第56代清和天皇まで遡ることができます。
ー今では海外の方にも教えていらっしゃるそうですね
8年くらい前から徐々に、海外に住んでいる方でお稽古したいという人が増えてきまして、当時はSkypeを使ってオンラインでお稽古をしていました。コロナ禍を経て、今ではZoomでお稽古をしています。剣術や弓道などの武道をやっていてその中で小笠原流を知って、やり始める方が多いですね。
なかなか難しい表現になってしまうんですが、どうしても伝統文化というと「形」重視になってしまうことが多いんですよね。だから「なんでやっているんですか?」と聞いても「そういうものだから」で終わってしまうこともあります。ですが、小笠原流では、それぞれの動きや意味がちゃんと残っているため、そういうものを習いたいと言って習い始める方が多いと思います。
ー小笠原流では、立ち方、お辞儀の仕方、さらには箱や包み物の紐の結び方まで教えているとのことで、その幅広さに驚きました
「礼法」というのは、いわゆる「日常の所作」なので、例えば玄関での履物の脱ぎ方やコートの脱ぎ方、食事作法なども教えています。稽古場にしかない特殊なもので稽古をすることも重要かも知れませんが、やはり礼法の場合は日常で使えないと意味がないのかなと思うので、普段お使いになっているものでお稽古をするようにしています。

ー小笠原さんの普段の生活についてもお聞かせください
江戸時代までは将軍家に教えるのお仕事だったのですが、明治時代になり、二十八代清務(きよかね)が流儀を教えることを生業にしてはならない、という家訓を作ったため、それ以降は仕事を持ちながら代々継承しています。私も普段は製薬会社で研究員をしており、週末や終業後に流儀に関わることをしています。
ー伝統文化について思っていることを教えてください
伝統文化は、明治になってからそれぞれの分野で独立する形になってしまったかなと思います。いまの自分たちの生活を考えてみてもやはりすべてのものが繋がっているわけですが、伝統文化は独立しているように感じられ、かつてやっていた本来のものではなく、現代は「習い事」のようになりがちなのかなと思います。当時行われていた背景、つまり、そうすることで自分たちの人生にどのような影響があったのか、が伝わってこそ伝統文化だと思います。そのため、色々な分野の方々が接点を持って、一般の方々にも習い事としてではなく、日本人として伝えてきたものを理解していただく機会をつくっていけたら良いのではないかと思います。ですので、このような万博の機会に様々な分野の方々が集まって多くのことを伝えようとするのは良い企画なのではないか、と考えています。
ー本プロジェクトについてちらりとお話にもあがったので、ここからは「伝統文化未来共創Project」についてお聞きしたいと思います。本プロジェクトをはじめようと思ったきっかけはなんですか?
いまから10年くらい前に多くの分野の方たちに集まっていただき、総合的に伝統文化を知っていただこうという企画がありました。その後、さまざまな分野の方々が集まった組織を作り、多くの方に日本の伝統文化の魅力を知っていただこうとする活動をしてきました。今回の大阪・関西万博にあたっては、発起人である大倉源次郎さんがお声掛けしてくださって、ぜひ一緒にやりましょうということではじまりました。
これまで行ってきた内容は武家文化に関係する分野が多く、歌舞伎や落語のような町人が親しんできた文化は少なかったので、今回はさまざまなものに触れられる良い機会だと思っています。そして、日本の文化は色々な方たちが時代、地域を問わずやっていることなので、それを網羅的に国内外の方に伝えられる機会でもあると思います。

ー現在、大勢の賛同者が集まっていますが、小笠原さんも声掛けなどされたのですか?
以前はしていました。伝統文化に関わっていれば良い、歴史があれば良いというだけでなくて、やはりこのプロジェクトにどれだけ想いを持っているかを重要視しています。それぞれプロなのでこだわりがぶつかることがあるのですが、そういうのを抜きにして、純粋にこのプロジェクトを理解して賛同してもらうことが大切だと感じています。
ー本プロジェクトを進めるにあたり、苦労したことや苦労していることはありますか?
せっかく想いを持って意見を言っていただいているので、何かしら形にしたいと思っていますが、期間や空間などの兼ね合いで実現が難しいことがあるというのが、苦労するところかなと思います。
ーイベント当日に向けてどのようなものを企画しているのでしょうか?
伝統文化というと堅苦しいものを見せるように思われるかもしれません。ですが、このプロジェクトは伝統文化関係の方だけでなく、経済界の方々など多くの方と一緒に進めているので、また違った見せ方ができればと思います。テクノロジーとの融合、それからむしろ伝統文化が成立するよりも前の原点に立ち戻るようなものも見せたいです。さまざまなことに流行りすたりがある中で、いつの時代も普遍的に受け入れられるものが残ってきた、それが伝統文化だと思います。古臭い、堅苦しいと思われがちな伝統文化ですが、実はそうではないというようなメッセージを伝えられたらと思います。
ーあっという間にプロジェクト開始の100日前ですが、率直なお気持ちはいかがですか?また、意気込みをお願いいたします!
一般的には「100日しかない」という印象かと思いますが、3か月以上あるわけですからまだまだやろうと思えばやれることはたくさんあると思います。
「伝統文化を守らないとならない」「伝統文化は大切だ」と思っている方が一定数いらっしゃって、だからこそ多くの伝統文化が支えられていると思うのですが、一方で個人的にはその状況をどうかなと。「必要のないもの」はあまり残らないと思うんです。ですから、先ほどもお話ししたように伝統文化はいつの時代も変わらない普遍的なものであるから残っているということを伝えたいです。
そして若者を含む幅広い世代の方々がこのプロジェクトに参画してくれています。伝統文化の関係者、経済界の方々、運営ボランティアの方々など、みなさんと共に「やってよかった」「やりきった」と思えるようなものにできればと良いなと思っています。
小笠原さん、ありがとうございました!
〈編集後記〉
インタビューさせていただいた日もお仕事の後とのことで、お忙しいところお時間をとっていただけて嬉しかったです。小笠原さんの伝統文化に対する考えやプロジェクトにかける想いなど、どれも芯のあるお話ばかりで、広報担当として身の引き締まる思いでした。初のインタビュー企画となり緊張しましたが、最後には力強い意気込みもお聞きすることができ、ますますイベント当日が楽しみになりました。
今後も情報発信をしていきますので、お楽しみに!

インタビュー・執筆:学生団体おりがみ 遠藤なゆ

弓馬術礼法小笠原流 三十一世宗家嫡男
伝統文化未来共創Project賛同者代表
小笠原清基(おがさわら きよもと)
1980年生まれ。弓馬術礼法小笠原流31世小笠原清忠宗家の長男。3歳で稽古を始め、小学5年で鎌倉の鶴岡八幡宮で流鏑馬神事の射手を務める。大阪大学を卒業後、筑波大学大学院にて神経科学博士を取得。「家業を生業にしない」という家訓があり、現在製薬会社の研究員。
NPO法人小笠原流・小笠原教場 理事長
日本女子体育大学弓道部 監督
小笠原清基「小笠原流・若日記」http://ogasawararyu.blog32.fc2.com/より引用
(最終閲覧:2025/02/19)